ばーちゃんが「ようしょく」を焼いてくれた。

「今はなんて言うのかね。お好み焼き?」

 と、ばーちゃんは言っていたが、これ甘いのでちょっと違うと思う。

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 昔は市場の屋台で売っていて、ばーちゃんの妹さんは野菜が入っている方が好きで、ばーちゃん自身は野菜が嫌いだったので、この豆が入っている方が好きだったとのことだ。
 屋台に行って、二人で分かれて並んだらしい。市場に行くのが楽しみだったと言っていた。

 メリケン粉(薄力粉)に砂糖と卵、あと隠し味で塩を少々。
 昔は卵なんか入れなかったらしい。ばーちゃんに言わせれば卵を入れるのは「ハイカラ」だそうだ。
 そんで先に茹でておいた豆を入れる。豆は多ければ多いほどいい。
 この豆も甘くて美味しい。
 あんまり水を入れないで、固めの生地にするのがコツとのこと。
 四本箸でねりねりするのを見るのが楽しい。

 途中で生地をちょっと舐めさせられる。
 うちのばーさまは"砂糖にちょっとの塩"のさじ加減が天才的で、昔っから本当に美味しく作る。
 孫自身は初めて舐める生地のはずなのに、小学校にあがる前ずっと作ってもらっていたばーちゃんちのきな粉とおんなじ塩梅の味がした。美味い。

 で、朝卵を焼いて油をそのまま残していたフライパンを温める。
 温まったらあとは完全にとろ火レベルの火加減。
 言われるがままとった小さいお玉で生地を流し、焼くべし。
「砂糖が入ってるからすぐに焦げる」とのこと。確かに最初にフライパンに当たったへりらへんはあっという間に焼き色づいていた。

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 裏返す。
「あら。全然焦げとらんね」
 ちょっと思っていたより早かったらしい。
 裏返したら、フライ返しでべしべしと押していく。
 この裏返したものはホットケーキでもお好み焼きでも押していく作業、最近気づいたのだけれど、我が家ならではの風習なのかも?
 押しまくると生地が薄くなる。確かに火の強さに対して火が通る感じが早い気がする。

 もう一度裏返す。もう美味そう。
 火が通っているか確かめるにも半分で割って、畳んで、皿に乗せてできあがり。
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 御年九十の御婆様はばっちり戦時踏襲者だ。
 あの頃痛い目を見たから、基本的に食料はストックしておくのが常で、賞味期限が近づいてきたらこういうのを作って色々混ぜて使っていくのだという。
 ローリングストック法を言われるまでもなく実践している。恐るべし。

 食パンを焼くよりもこっちのほうが美味しいと思うとばーさまは言う。
 口に運びながら孫も間違いありませんわと思う。

 生地は、パンケーキとかに慣れてる人にとってはふわふわは足りないくらいか。
 結構固いのだが、噛みごたえがあるのとはちょっと違う。意識して皮を厚く作ったたい焼きの尻尾部分に近いかもしれない。それよりまだちょっと固い。"ぎゅっとしている"という表現が一番近い気がする。
 豆なんかは熱で水分が飛んでちょっとパサパサ、さらに固くなっていてこの歯ごたえがまた楽しい。
 あと変な話、朝焼いたと言っていた甘くない卵焼きの匂いがほんのりして、隠し味みたいになっている。美味い。

 手順を真似てレシピを覚えても、永遠にこの味そのものは再現できんのやろうなぁ、と思いながらモソモソ頂く孫でした。


 そんでこれ、なんで「ようしょく」なのだろうか。